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最高裁判所第二小法廷 昭和46年(オ)243号 判決

上告人

三好敬

代理人

唐津志都磨

佐野孝次

被上告人

柏木良朗

右法定代理人親権者母

柏木英子

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人佐野孝次の上告理由について。

訴の取下は訴訟行為であるから、一般に行為者の意思の瑕疵がただちにその効力を左右するものではないが、詐欺脅迫等明らかに刑事上罰すべき他人の行為により訴の取下がなされるにいたつたときは、民訴法四二〇条一項五号の法意に照らし、その取下は無効と解すべきでありまた、右無効の主張については、いつたん確定した判決に対する不服の申立である再審の訴を提起する場合とは異なり、同条二項の適用はなく、必ずしも右刑事上罰すべき他人の行為につき、有罪判決の確定ないしこれに準ずべき要件の具備、または告訴の提起等を必要としないものと解するのが相当である。そして、被上告人法定代理人のした本件の訴の取下が、上告人の刑事上罰すべき強要行為によつてなされたものであるとした原判決の事実認定・判断は、挙示の証拠に照らして肯認することができる。したがつて、本件訴の取下は無効であるとして本案につき審理判断をした原判決は正当であつて、その認定・判断に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(岡原昌男 色川幸太郎 村上朝一 小川信雄)

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